2015年5月23日土曜日

能力を役立てる (昔ばなし)

昔昔、あるところにぶい太郎という話をするのが上手な男の子がいました。


ぶい太郎はいつも人をだましてからかっていました。
「財布がむこうに落ちていたから拾っておいで!」と言っては友達をだまして面白がりました。
「クラスの~君が君の事を好きだって!」と言っては女の子をからかいました。
ぶい太郎は話が上手で説得力があったので、みんなだまされてしまいました。

みんなぶい太郎のことが嫌いなので、ぶい太郎に自分から話そうとする子は一人もいませんでした。なのでぶい太郎はいつも一人で、さびしい気持ちでした。
さびしさをうめるために、また嘘をついて友だちをからかうのでした。


× × ×


ある日、ぶい太郎のクラスでちょっとした事件がありました。
体育の授業から戻ったら、クラスの女の子のぶい子の財布がなくなっていたのです。ぶい子やその友だちがたくさん探しても、財布を見つけることはできませんでした。

ぶい子はクラスメイトのA君を指差して、「A君が盗った」!と言って泣き出しました。
A君は、いつもぶい子にちょっかいをだしているからです。
A君は「自分は盗っていない!」と訴えましたが、いつも悪いことばかりしていたので、だれも信用しませんでした。

ぶい太郎はA君の言葉を信じていました。体育の授業の前も後も、授業中も、ずっと一緒にいたからです。
なので「A君は盗っていない!」とクラスのみんなにいいました。

ぶい太郎は頭が良くて、説得力がある話し方ができたので、クラスのうちの何人かは、A君は盗んでいないのではないか?と考えはじめました。

彼らは教室の中を財布が落ちていないか探しました。すると、ぶい子の机の中の奥に財布があるのを見つけました。ぶい子はしまい忘れていたのです。
A君はぶい太郎に、泣きながらたくさん「ありがとう」と言いました。
ぶい太郎もうれしい気持ちでいっぱいでした。


× × ×


大人になったぶい太郎は、たくさん勉強して弁護士になりました。
そして罪のない人や、誤解されている人を守るために、自分の説得力を使って一生懸命戦いました。
そしてもう、子どものころのように嘘をつくことはなくなりました。
嘘をつかなくても、自然とぶい太郎の周りに人が集まるので、さびしい気持ちにならなかったからです。



読んでくれてありがとさん!!